シロシビン療法を受けるには?オレゴン州を事例に詳しく解説

治療

うつ病や不安症の新たな治療選択肢として注目されるシロシビン療法は、適切な施設で専門家の指導の下で受けることが何より重要です。東京から飛行機で約10時間のオレゴン州なら世界で最も制度化された環境で安全に治療を受けることが可能です。本記事では、シロシビン療法の受け方から準備方法まで、安全な治療手順について詳しく紹介します。

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従来の抗うつ薬が効果発現まで数週間を要する中、わずか1-3回の投与で数ヶ月の効果持続を実現するサイケデリック療法。オーストラリアでは2023年に世界初の合法化、米国では州レベルでの制度確立が進む一方、日本では具体的な社会実装の道筋が見えていません。

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シロシビン療法は適切な施設で専門家の指導の下で受けることが重要

シロシビン療法を受ける際は、州認定の施設で専門的な訓練を受けたファシリテーターの指導の下で行うことをお勧めします。現在、全米でいち早く制度が整ったオレゴン州では、合法的にシロシビン療法を受けることが可能であり、現在、25の認定施設が運営されています。料金は個人セッションかグループセッション、投与量によって800ドルから3,800ドル程度で、予約は数か月先まで埋まっている状況です。

この治療法の成功は、セットとセッティングと呼ばれる概念に大きく左右されるため、十分な準備と適切な環境が不可欠です。自己判断での使用は危険であり、必ず専門家による管理の下で実施することが求められます。

シロシビン療法とは何か

シロシビンは、マジックマッシュルームと呼ばれるキノコに含まれる天然の化合物で、セロトニン受容体の5-HT2A受容体に作用することで、意識状態を変化させます。依存性はなく、神秘体験を生じさせ、幸福感や生活の満足度を体験後も長期的に増加させるとされています。

シロシビン療法の特徴は、単純に症状を抑制するのではなく、患者の内面的な洞察や自己理解を促進することで、根本的な心理的変化をもたらす可能性があることです。この点で、従来の精神医学的アプローチとは大きく異なる治療パラダイムを提示しています。

日本での法的状況と海外治療の必要性

日本では、シロシビンは「麻薬及び向精神薬取締法」により厳格に規制されており、マジックマッシュルームは2002年より麻薬原料植物として指定されています。そのため、シロシビン療法を受けるには必ず海外での治療が必要となります。

海外でのサイケデリック治療の選択肢として、ジャマイカでのマッシュルームリトリートやタイでのアヤワスカ体験なども存在しますが、これらの国や地域では必ずしも制度が整っているとはいえず、医学的監督が不十分な場合があります。一方、オレゴン州は世界で初めて州レベルでシロシビン療法を合法化し、包括的な規制制度を確立した地域として、最も安全で信頼性の高い治療環境を提供しています。

東京からポートランドまでは直行便で約10時間、時差は17時間(サマータイムは16時間)となります。治療期間を含めて1-2週間程度の滞在を計画することで、準備から統合まで完全なプロセスを体験することが可能です。なお、アメリカでの治療には観光ビザ(ESTA)で入国でき、特別な医療ビザは必要ありません。

オレゴン州でのサイケデリック療法の現状

医学界では、従来の抗うつ薬とは異なる作用機序により、治療抵抗性うつ病やPTSD、依存症などの精神疾患に対する新たなアプローチとして研究が進められています。特に、短期間の治療で長期的な効果が期待できる点が注目されており、従来の薬物療法とは一線を画する治療法として位置づけられています。早ければ2026年にもFDAによって承認される見通しとなっています。

オレゴン州では2020年11月3日に行われた住民投票で、シロシビンマッシュルームサービスプログラム(第109法案)が可決され、全米で初めて州レベルでの合法化が実現しました。この法案により、治療施設、ファシリテーター、製造者などに州の免許を与えてサービスを提供する制度が確立されています。

2025年7月時点で、オレゴン州では州からライセンスが発行された25の施設が運営をしているとのこと。治療の準備から当日のセッション、セッション後の統合までを総合的にサポートする役割であるファシリテーターには200時間程度のトレーニングが義務付けられており、様々な教育機関が州認定のファシリテーター教育プログラムを提供しています。

また、州の調査によると、72%の人が「なんとなく幸福感を感じる」ために利用したいと回答しており、多くの人がさまざまな目的でシロシビン治療を受けています。

シロシビン療法の一般的な流れ

シロシビン療法の一般的な流れ

まずは、シロシビン療法の全体像を把握することから始めましょう。シロシビン療法は通常、準備セッション、投与セッション、統合セッションの3段階に分けて実施されます。この段階的なアプローチにより、安全性と治療効果の最大化を図っています。

準備セッション

準備セッションでは、ファシリテーターとの面談を通じて、治療に対する期待や不安、過去の精神的なトラウマなどについて詳しく話し合います。この段階で、シロシビン療法に向けた精神状態(セット)を整え、治療への準備を行います。

また、シロシビンの効果や体験中に起こりうる現象について詳しい説明を受けます。実際のところどのような体験が起こるかはシロシビンを摂取してみなければわかりません。そのため、呼吸法や瞑想といったリラクゼーション技術の練習を通して、投与セッション中に不安になった際の対処法を学ぶのです。加えて、医学的な禁忌事項の確認や、服用中の薬物との相互作用についても詳細にチェックされます。

準備セッションは通常複数回実施され、患者とファシリテーター間の信頼関係を構築することも重要な目的となっています。この信頼関係が、実際の投与セッションでの安全性と治療効果に大きく影響するためです。

投与セッション

投与セッションは、通常6~8時間にわたって行われます。快適で安全な環境に設定された部屋で、ファシリテーターの監督の下でシロシビンを摂取します。この間、主に内向的な体験に集中し、ファシリテーターが準備した音楽を聴きながらアイマスクを着用して横になることが一般的です。

この間、ファシリテーターは常に近くに待機し、必要に応じてサポートを提供しますが、基本的には体験に介入せず、安全な環境を維持することに専念します。不安や恐怖を感じた場合には、呼吸法や言葉によるサポート、手を握る、ハグをするなどの接触を通して安心感の提供を行います。

投与量は個人の体重、過去の使用経験、治療目的などを総合的に考慮して決定されます。はじめは、少ない容量から始めるのが適切でしょう。マジックマッシュルームをお茶に溶かしたり、ジュースに混ぜて摂取することが一般的です。効果は摂取後30分から1時間程度で現れ始め、ピーク時間は2~4時間程度続きます。その後、徐々に効果が減少し、完全に日常の意識状態に戻るまでには6~8時間を要すことがほとんどです。

統合セッション

統合セッションは、投与セッション後の体験を日常生活に活かすための重要なプロセスです。通常、投与セッションから数日後に開始され、数週間から数か月にわたって継続されます。

この段階では、体験中に得られた洞察や気づきについてファシリテーターと詳しく話し合います。ジャーナリングやアートを通して、体験の意味をより深く理解し、日常生活での行動変化につなげていきます。

また、瞑想やマインドフルネス、自然との触れ合いなど、継続的な実践を通じて治療効果を維持・向上させる方法についても指導を受けます。日常生活にどのように体験での学びを取り入れるかといった具体的なプランの策定も、統合セッションの重要な要素となっています。

サイケデリック療法に向いている人・向いていない人

シロシビン療法には明確な適応基準と禁忌事項があり、すべての人に適している治療法ではありません。治療前の詳細なスクリーニングにより、安全性と効果を最大化することが重要です。

適応となる可能性が高い人

医学的適応としては、治療抵抗性うつ病、PTSD、不安症、強迫性障害、依存症(アルコール、ニコチン、薬物)、末期がん患者の実存的苦痛などに対して研究が進められ、有効性が示されています。ただし、治療目的に限らず、人生の転換期における自己理解の深化、スピリチュアルな成長、ストレス軽減なども適切な目的となります。

実際、オレゴン州保健当局の調査によると、実際の利用者の72%が「ウェルネスと自己探求」を目的としており、これが最も多い利用目的となっています。具体的には、意識の拡張、視点の転換、創造性の向上、全般的な健康増進を求める人々が大きな割合を占めており、このような目的でのサイケデリック療法も可能です。

いずれにせよ、最も重要なのは、明確な「目的」を持って治療に臨むことです。漠然とした好奇心だけではなく、何を求めて体験するのか、どのような変化を期待するのかを事前に明確にしておくことが、安全で有意義な体験につながります。また、内省的な体験に対する開放性があり、変化への意欲を持つ人により適していると言えるかもしれません。

禁忌事項と注意点

統合失調症、双極性障害I型、その他の精神病性障害の既往または家族歴がある場合は、症状悪化のリスクが高いため治療を受けることができません。重度の心疾患、脳血管疾患、てんかんなどの神経疾患も安全上の理由から禁忌となります。

妊娠中・授乳中の女性、18歳未満の未成年者も治療対象外となります。また、MAO阻害薬、リチウム、トラマドールなど特定の薬物を服用中の場合は、深刻な薬物相互作用のリスクがあるため治療を受けることができません。重度の人格障害、活動期の薬物依存症、強い自殺念慮がある場合も治療適応外となります。

ただし、高齢者や高血圧、糖尿病などの持病がある方については、症状のコントロール状況によって慎重に治療の可否が判断されます。65歳以上の場合は、より詳細な医学的評価と治療中の監視が必要となりますが、適切な管理の下で治療を受けることは可能です。多くの場合、20分程度の無料のコンサルテーションを設けていますので、詳しくはファシリテーターや医療従事者に確認してみてください。こちらのお問い合わせからも相談可能です。

セットとセッティングの重要性

サイケデリック療法において、重要な概念の一つに「セットとセッティング」というものがあります。「セット」とは思考、気分、期待など個人が体験に持ち寄る精神状態のことを指します。「セッティング」とは身体と社会環境であると定義されています。この概念は、サイケデリック療法の成功において極めて重要な要素となります。

セットには、患現在の心理状態、人生観、治療に対する期待、過去のトラウマ体験などが含まれます。ネガティブな精神状態や不安、恐怖が強い場合には、それらが体験中に増幅される可能性があるため、準備セッションでの心理的準備が不可欠です。ファシリテーターと信頼関係を築いた上で、しっかりと時間をかけて準備することをお勧めします。

セッティングは、物理的環境と社会的環境の両方を指します。物理的環境には、治療室の温度、照明、音楽、快適性などが含まれます。社会的環境では、ファシリテーターとの関係性、治療に対する家族や友人のサポート、社会的偏見などが影響を与えます。

ストレス、恐怖、不快な環境は不快な体験(バッドトリップ)につながることがあるとされています。逆に、快適で安全な場所で、くつろぎ、暖かくした、好奇心のある人では、心地よい体験ができる可能性が高いとされています。このため、適切なセットとセッティングの管理が、治療効果の最大化と副作用の最小化に直結すると言われるのです。

療法前の準備方法

シロシビン療法の効果を最大化するためには、投与セッション前の準備が必要です。心理的準備と身体的準備の両面から、包括的なアプローチを取ることが推奨されています。

心理的準備としては、まず自分自身と向き合う時間を意識的に作ることが重要です。瞑想やマインドフルネスの実践を通じて、内省的な態度を養い、自分の感情や思考パターンを客観視する能力を向上させます。ジャーナリングの習慣を身につけることで、日常的に自分の内面を観察し、記録する練習を行います。SNSから距離を置くなどして、強制的に自分自身と向き合える環境を整えるのも手かもしれません。

さらに、呼吸法の練習も重要な準備要素です。深い腹式呼吸や4-7-8呼吸法などの技術を練習することで、投与セッション中に不安や恐怖を感じた際の対処法を身につけます。これらの技術は、体験中の心理的安定性を保つための重要なツールとなります。

身体的準備では、投与前数日間の食事や睡眠の管理が重要です。アルコールやカフェインの摂取を控え、十分な睡眠を確保し、軽い運動を行うことで、身体のコンディションを整えます。一般的に当日は、3〜4時間前までに軽い食事を済ませておくことが求められます。また、服用中の薬物については、必ずファシリテーターと相談し、必要に応じて調整を行います。

治療後の統合期間についても事前に計画を立てることが大切です。投与セッション直後は、すぐに仕事や日常業務に戻るのではなく、体験を消化し統合するための時間を確保します。サイケデリック療法は「投薬するだけ」の従来の治療とは異なり、いわば脳をリセットすることで、投与後も時間をかけて効果が現れます。自然環境での散歩や軽いハイキング、創作活動などを通じて、体験から得られた洞察を日常生活に取り入れるプロセスを大切にします。

日本語でのシロシビン療法を受ける方法

日本語でのセッションを希望される場合は、通訳を介す方法もありますが、日本人ファシリテーターの下でのシロシビンセッションが最適でしょう。言語の壁がないことで、より深い内省と洞察が可能になり、微細な感情の変化や体験の詳細を正確に伝えることができます。

オレゴン州認定シロシビン・ファシリテーターのビショップ菜生子さんは、オレゴン州南部のアシュランドを拠点として、日本語による包括的なシロシビン療法サービスを提供しています。Lumina Life Journeysでは、準備セッションから統合セッションまでの全プロセスを日本語で受けることができ、文化的背景を理解したきめ細やかなサポートが特徴とのことです。

サービス内容には、オンラインでの事前相談(20分)、詳細なインテーク・セッション(1時間)、現地での準備セッション(低用量体験を含む)、認可施設での本格的なシロシビン・セッション(約6時間)、そして統合セッションが含まれています。また、マイクロドージング・セッションも提供されており、より穏やかなアプローチを希望する方にも対応しています。

アシュランドでの滞在中は、推奨ホテルの案内や交通手段の手配サポートも受けられるため、海外での治療に不安を感じる方でも安心して参加することができます。詳細な情報や予約については、Lumina Life Journeyのウェブサイトで確認ください。

代表的なシロシビンサービスセンター

最後に、オレゴン州で実際に営業している代表的な施設をいくつかご紹介します。

EPIC Healing Eugene(ユージーン)

シロシビンサービスセンターの様子

オレゴン州初のシロシビンサービスセンターとして2023年6月に開業した歴史的な施設です。2つのオフィススイートでサービスを提供しており、3,500人以上の待機リストを抱えるほどの高い需要を誇ります。月間わずか20セッションの提供能力に対して圧倒的な需要があり、オレゴン州のシロシビン療法への関心の高さを物語っています。

Satya Therapeutics(アシュランド)

シロシビンサービスセンターの様子

2023年7月から営業を開始し、サービスセンターライセンスに加えて製造ライセンスも保有している珍しい施設です。メドフォードにある別の施設でシロシビン製品の製造も行っており、統合的なサービス提供が特徴です。これまでに28名の患者を治療しており、州外からのクライアントが約80%を占めています。契約ファシリテーターの料金は800ドルから2,800ドルの範囲となっています。

InnerTrek(ポートランド)

シロシビンサービスセンターの様子

ポートランドを代表するサービスセンターの一つで、デイセッション(1,200ドル)からリトリート形式(2,500ドル)まで幅広いオプションを提供しています。ライセンス取得済みプロフェッショナルカウンセラーも在籍しており、「継続的なケア」の提供を重視した運営を行っています。

Omnia Group Ashland(アシュランド)

シロシビンサービスセンターの様子

ジャクソン郡に位置する認可施設で、新しい規則変更に積極的に対応している施設として知られています。年間4時間の継続教育要件など、業界の発展に合わせた高品質なサービス提供を目指しています。

まとめ:シロシビン療法を安全に受けるために

シロシビン療法は、うつ病や不安症などの精神疾患に対する画期的な治療選択肢として注目されていますが、日本では法的に認められておらず、海外での治療が必要となります。現在最も安全で制度化された治療を受けられるのは、世界に先駆けて合法化を実現したオレゴン州です。

オレゴン州では州認定の施設で専門的な訓練を受けたファシリテーターの指導の下で治療が実施され、準備セッション、投与セッション、統合セッションの3段階で構成される包括的なプロセスを提供しています。治療効果を最大化し、安全性を確保するためには、これらの適切な手順と準備が不可欠です。

治療前には詳細な医学的・心理的スクリーニングが行われ、禁忌事項に該当しないかが慎重に評価されます。統合失調症や双極性障害などの精神病性疾患、重度の心疾患、特定の薬物との相互作用など、安全上の理由から治療を受けられない場合もあります。一方で、治療抵抗性うつ病やPTSDなどに対しては、従来の治療法では得られない効果が期待できる可能性があります。

セットとセッティングの概念を理解し、瞑想やジャーナリング、呼吸法の実践を通じて適切な準備を行うことで、治療効果を最大化することができます。東京からポートランドまで約10時間の旅程となりますが、1-2週間の滞在期間を確保することで、完全な治療プロセスを体験することが可能です。

投与セッション後の統合期間も治療の重要な一部であり、体験から得られた洞察を日常生活に活かすための継続的な取り組みが求められます。興味のある方は、必ず医学的禁忌事項を確認し、十分な準備と理解を持ってオレゴン州の専門施設での治療を検討してみてください。

もっと詳しく知りたい方は、こちらのお問い合わせからご連絡ください。相談承っております。

本記事は情報提供のみを目的としており、医療アドバイスではありません。
精神的・身体的な問題を抱えている方は、必ず医療専門家にご相談ください。
また、日本国内でのサイケデリック物質の所持・使用は法律で禁止されています。

この記事を書いた人
Yusuke

米国リベラルアーツカレッジを2020年心理学専攻で卒業。大手戦略コンサルティングファームにて製薬メーカーの営業・マーケティング戦略立案に従事するなかで、従来の保険医療の限界を実感。この経験を通じて、より根本的な心身のケアアプローチの必要性を確信し、現在はオレゴン州認定プログラムInnerTrekにてサイケデリック・ファシリテーターの養成講座を受講中(2025年資格取得予定)。

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